白質ジストロフィー概要

白質ジストロフィーとは

アムステルダム自由大学UMC(University Medical Centers)HPより [Link]

Leukodystrophy(白質ジストロフィー) は、白質脳症のうち遺伝的欠陥によって引き起こされる疾患であり、病理学的には進行性の症状とミエリン(髄鞘)障害によって特徴づけられる。ミエリンは,脳内の信号を伝達する軸索を覆う構造体であり,グリア細胞のひとつであるオリゴデンドロサイトにより作成される。ミエリンの存在により脳内の信号伝達が円滑に行うことができるが,白質ジストロフィーでは,ミエリンに障害があるため信号伝達が円滑にいかず,様々な神経機能障害が引き起こされる。

よく似た用語にLeukoencephalopathy(白質脳症)があるが,これはより広範な定義で,白質のみ,あるいは主に白質に関与する全ての障害のことを言い,遺伝性でない後天的な疾患や,進行性でないものも含まれる。例えば,多発性硬化症や進行性多巣性白質脳症(PML)などは,白質ジストロフィーではない白質脳症である。

より詳しい情報はGene Reviews® Japan(Gene Reviews日本語翻訳サイト)に記載されている。


白質ジストロフィーの分類(オランダVU大学)

van der Knaap et al.(2017): Leukodystrophies: a proposed classification system based on pathological changes and pathogenetic mechanisms; Acta Neuropathol. 2017; 134(3): 351–382. ; doi: 10.1007/s00401-017-1739-1 [PMC]

白質ジストロフィーの分類について,これまでの多くの関連研究をレビューし総括した論文。分類のポイントとしては,①どの細胞(オリゴデンドロサイト/アストロサイト/ミクログリア/…)に起因するか,②ミエリンがどのように障害されるか(形成不全,脱髄,ミエリン空胞化)。

白質ジストロフィーの分類(論文より転載,日本語訳,日本語サイトのリンク付与)

分類 疾患名
ミエリン障害 髄鞘形成不全 ペリツェウス・メルツバッハー病(PMD;PLP1変異)
末梢神経障害、中枢性髄鞘形成不全症、ワーデンバーグ症候群、ヒルシュスプルング病(SOX10変異)
ペリツェウス・メルツバッハー様疾患(Cx47変異;GJA12変異)
初期の有髄構造の髄鞘形成不全
脱髄 異染性白質ジストロフィー(MLD;ARSA変異)
マルチプルサルファターゼ欠損症(SUMF1変異)
グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病;GLD;GALC変異)
X連鎖副腎白質ジストロフィー(XALD;ABCD1変異)
ミエリン空胞化 白質脳症を伴うミトコンドリア病
フェニルケトン尿症
カナバン病(ASPA変異)
その他のアミノ酸代謝障害
Cx32関連(X連鎖)シャルコー・マリー・トゥース病
アストロサイト障害 アレキサンダー病
皮質下嚢胞を伴う巨大脳白質脳症(MLC)
ClC-2関連疾患
白質消失病(VWM)
エカルディ・グティエール症候群とその変種
Oculodentodigital dysplasia(ODDD)
軸索障害 基底核及び小脳萎縮を伴う髄鞘形成不全症(TUBB4変異)
先天性白内障を伴う髄鞘形成不全(FAM126A変異)
早期発症の神経変性疾患
GM1ガングリオシドーシスGM2ガングリオシドーシス
神経セロイドリポフスチン症
・AGC1関連疾患
・AIMP1関連疾患
・HSPD1関連疾患
Pol III関連白質ジストロフィー
脳幹および脊髄の障害と乳酸上昇を伴う白質脳症(LBSL)
脳幹および脊髄の関与および脚の痙縮を伴う髄鞘形成不全(HBSL)
巨大軸索ニューロパチー(GAN)
ミクログリア障害 CSF1R関連障害
神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)
・色素性または色彩性白質ジストロフィー
那須・ハコラ病
血管障害 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)
禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症(CARASIL)
脳卒中および白質脳症を伴うカテプシンA関連動脈症(CARASAL)
脳アミロイドアンギオパチー
脳石灰化と嚢胞を伴う白質脳症